研究概要 |
最終目的生成物である高分子のモノマー単位のモデルとしての9,9'-ビフルオレニリデンのキラリティーと光異性化について、ポリマーについての検討に先立って、試験的な実験を行った。この目的で、9,9'-ビフルオレニリデンと(+)-ビナフトールを混合してメタノール溶液として、あるいは9,9'-ビフルオレニリデンと(-)-メントールを混合してトルエン溶液として、あるいは9,9'-ビフルオレニリデンと(-)-α-(2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレニリデンアミノキシ)プオピオン酸を混合してメタノール溶液として、あるいは9,9'-ビフルオレニリデンと(-)-α-(2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレニリデンアミノキシ)プオピオン酸を混合してメタノール溶液として、窒素雰囲気下で500Wのハロゲン灯を照射した。その結果、前年度(+)-ピネンをキラル源として用いた場合に観測された円偏光二色性(CD)スペクトルはほとんど見られず、(+)-ピネンに比べて、他の3種のキラル化合物は9,9'-ビフルオレニリデンの光異性化においてキラル誘起のためには有効でないことが明らかになった。以上に加えて、9,9'-ビフルオレニリデンと(-)-α-(2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレニリデンアミノキシ)プオピオン酸の錯体形成による、9,9'-ビフルオレニリデンの光学分割も試みた。両者を混合してメタノール溶液とし、メタノールを徐々に溜去する方法で錯形成を行い、上澄みと沈殿のCDスペクトルを測定した。しかし、両者の錯体と考えられるCDおよび吸収スペクトルはみられたものの、9,9'-ビフルオレニリデンに特有の450nm付近の吸収帯に対しては明確なCD吸収は見られず、9,9'-ビフルオレニリデンの光学活性体を単離するには至らなかった。
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