研究分担者 |
佐田 和己 九州大学, 工学研究院, 准教授 (80225911)
竹内 正之 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ有機センター, グループリーダー (70264083)
藤田 典史 九州大学, 工学研究院, 助教 (10346819)
沼田 宗典 立命館大学, 総合理工学研究機構, 准教授(任期制) (70423564)
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研究概要 |
天然多糖、シゾフィラン、カードランは、水中で三本鎖から成るヘリックス構造を取るβ-1,3-グルカン系多糖類である。三本鎖構造は水中で安定であるが、DMSO中では一本鎖に解離する。さらに、このDMSO溶液を水で希釈すると、三本鎖から成るヘリックス構造が再生される。このヘリックス構造の内部が比較的疎水性であるため、シクロデキストリンの1次元集積体と見なす事ができる。この空孔はさらにキラルであることが容易に想像される。これまでこの一次元空孔に種々の機能性パーティクルや高分子を一次元配列できることを報告している。これはβ-1,3-グルカンが天然の1次元"ホスト"として機能することを示唆している。本研究ではβ-1,3-グルカン類が形成する一次元空孔内に、(1)ナノ粒子、(2)カーボンナノチューブ、(3)導電性高分子などを内包し、得られる1次元コンポジットを機能性のナノマテリアルとして応用することを目的として研究を展開している。 最近、カードランの6位水酸基への選択的かっ定量的な官能基の導入法を開発した。これにより、カードランをシゾフィラン同様の1次元ホストとして利用できるようになると期待される。カードランはシゾフィランより安価であり、ナノマテリアルの素材としては極めて有望な天然高分子である。今回、カチオン性あるいはアニオン性基を導入した水溶性のカードランを合成し、これらカードランがカーボンナノチューブを効率的に内包し、水中に安定に分散できることを見出した。AFMによる観察の結果、これらイオン性基を持つカードランがカーボンナノチューブ表面をらせん状に被覆し、天然のβ-1,3-グルカン同様のラッピング機能を保持していることを明らかとしている。さらに、種々の分子認識能を持つ官能基の導入にも成功しており、ラッピングを利用した機能性1次元コンポジット群の創製が可能になりつつある。今後は得られた1次元コンポジットを構成単位としたナノ薄膜や配向性ナノ材料の創製を目指して、さらに研究を展開していく予定である。
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