研究概要 |
β-1, 3-グルカン構造を基本単位とする天然多糖(シゾフィラン・カードランなど)は、水中で三本鎖からなるヘリックス構造を取るが、DMSO中では一本鎖に解離する。一方、このDMSO溶液を水で希釈すると、水中では三本鎖からなるヘリックスが再生することが知られている。さらに、ヘリックス構造の内側に存在する0.3 nmの疎水性かつキラルな一次元空孔が存在することを見出した。一本鎖と三本鎖間の可逆的な変換を利用することで、この一次元空孔は種々の機能性パーティクルや高分子を一次元配列するためのホストとして機能すると期待される。この作業仮説を出発点として、β-1,3-グルカン類が形成する一次元空孔を、(1)ナノ粒子・導電性高分子などを配列する場として、(2)立体規則性重合を誘起する鋳型として応用することを目的として研究を遂行した。 ベンジルアミンを触媒とし、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いたゾルーゲル反応により、その複合体のキラリティを固定化することに成功した。シゾフィランは、キラル誘導の働きだけではなく、複合体表面におけるシリカ粒子の吸着に寄与していることが明らかとなった。さらに、アミノ基を導入したシゾフィランを同様にテンプレートとして用いることで、アミノ基の触媒効果によって、より温和な条件でゾルーゲル反応を進行させることができた。また本手法により、複合体の特性をより効果的に保持することが可能になることを明らかにした。
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