研究概要 |
本研究は、課題(A)「モジュール化学の展開とバルク物性制御」(平成18年度)、課題(B)「基盤環境と結晶化プロセスによる薄膜結晶相制御」(平成18-19年度)、課題(C)「アンバイポーラFET能の最適化条件の探索」(平成19年度)から構成される。昨年度は、課題(A)及び(B)を中心に遂行すると同時に、両者を互いに有機的に結合し、課題(C)を実現するための基盤的研究を進めた。1)アンバイポーラ能を発現する上で、電荷輸送を担う分子の立体構造、分子軌道エンジニアリングが重要となる。そこでまず本研究では、[M(Cat)(Cnbpy)](M=Pt,Pd);Cat=catecholate,n=9-17)群や[M(Bdt)(Cnbpy)](M=Pt,Pd);Bdt=benezenedithiolato,n=9-17]群が等方性液体から結晶化する際にシリコン基盤上にて一軸配向することを見出した。また[Pt(Bdt)(Mebpy)]が新規p型FET活性物質であることも見出した。2)分子が示す一軸配向性に長鎖に含まれる炭素数依存性があることを見出した。中でもC17の長鎖を含む錯体において最も良好な配向が発現すると共に、大気中においても7.5×10-6cm2/Vsの移動度を示すp型FET特性を示すことが明らかとなった。またポリイミドなどの配向膜を用いることで両質の疑単結晶化が進行することを既に見出していることから、この手法を用い面内配向の制御を行うことで更なる移動度の向上を期待できる結果を得た。またアンバイポーラ型FET特性実現のためにCa電極などを用いることで分子と電極の仕事関数の最適化を試み、結晶融解法の有用性を確立するための基盤を築いた。
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