本年度は、昨年度行った有機分子複合パターニング修飾の構造精度を上げることを目的に、ハロゲン修飾メカニズムの再検討と、これらの正確な制御に関する研究を行った。<1-1-2>方向に0.36°傾斜させた微傾斜水素終端化Si(111)面を8.6M HBr水溶液を用いて、Br終端化を行った。この時のBr終端時間(HBr浸漬時間)、を変化させ、摩擦力顕微鏡(LFM)、XPSおよびFTIRで表面修飾の様子を観察した。その結果、LFM像からstep近傍付近が帯状にBr修飾されている様子が直接観察することが出来た。さらに、HBr中の浸漬時間が長くなるにつれて、帯の幅は太くなり、約60secで、テラス幅の半分まで、150secでほぼ全域を覆うことが分かった。また、(111)面の傾斜方向を<1-1-2>だけでなく、反対の<112->方向に傾けたものに対しても同様の実験を行ったところ、<112->方向傾斜のサンプルでは、テラスサイトにおけるBr終端化の速度が極端に遅くなることが分かった。これな、前者のstepサイトが反応性の高いdi-hydrideサイトであるのに対し、後者がmono-hydrideサイトであることに起因するものであると考えられる。つまり、このことからもBr-イオンとstep端との反応性がテラスのBr終端化速度に大きく寄与していることが分かった。これらに対してフェニルLi試薬とメチルLiを用いて、2種有機分子から成るパターニング表面を作成することに成功した。
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