1.金ナノリングの合成を、いくつかの新しい方法で試みた。当初に計画した直接合成法が困難であったため、まず、金の球殼類似構造を、テンプレートを用いて形成する手法の実験的検索を中心に行った。例えば、球状高分子を鋳型としたテトラ塩化金酸のボロハイドライドによる還元や、銀ナノ粒子をコアにした金シェル形成、有機薄膜上の前駆体を種とした液相成長法などである。しかし、これまでのところ、電子顕微鏡レベルでリング様構造が確実に多量生成する方法を見い出せていない。そのため、テンプレートの選択と還元法の改良について検討を進めた。 2.金ナノ粒子をモデルとして、配列構造の電極表面上での生成と、それらの光電子機能に関する検討を行い、以下の成果を得た。 (1)吸着性イオンの共存下では、プラズモン光吸収帯のシフトで観た充放電過程が大幅に遅くなることがわかった。 (2)テトラオクチルアンモニウムブロミド保護した金ナノ構造体は、トルエン溶液中で、短時間で多量に有機薄膜上に固定化できる。その速さや、ジチオール自己集合膜上での配列均一性は、水中のクエン酸保護粒子の吸着に勝る。 (3)ITOの表面において、ジアミンとアミンの混合修飾層を用いれば、よく分散した状態で、時間の関数として固定化量を自在に制御できることがわかった。一方、ジアミン単独修飾層を用いると、バルクの金超薄膜と同じ光電子物性を示す状態を創出できることがわかった。 (4)アルカンチオールのみで保護した金ナノ粒子の電位応答挙動を鎖長依存性に関し把握することができた。
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