大気エアロゾルの表面張力を測定し、表面張力と化学組成の結果を定量的に関係づける方法を検討した。平成18年度は主にミストチャンバーによるエアロゾル採集法と表面張力測定に絞り、方法の確立を目指した。大気エアロゾル、あるいはシクロヘキサジエンの酸化反応で生成する有機エアロゾルを2〜3時間程度ミストチャンバーで吸引したところ、70〜71mNm-2という表面張力の測定値が得られた。エアロゾルを含まない水の表面張力は72mNm-2なので、表面張力の低下は1から2mNm-2程度であった。この結果はDecessariらのエアロゾルに関する韓国済州島での観測結果ともほぼ一致する。過去の反応機構の研究から、アジピン酸が生成していると思われたので、LC-MSで資料を分析したところ、アジピン酸と考えられるところにピークが観測された場合もあるが、再現性はなく断定はできなかった。ミストチャンバーに濃縮機能を求めたが、予想どおりの濃縮率は得られなかったので、長時間吸引してより多数のエアロゾルが溶解するようにミストチャンバーを改良しテストしている。フィルターサンプリング法も試したが、ミストチャンバー法と同様であった。 今回の結果からは大気中に浮遊する水によく溶ける有機エアロゾル量は少なく、表面張力の低下は1から2mNm-2程度であることがわかった。霧水中では数10mNm-2の表面張力の低下が報告されているが、これは濃縮された場合であり、大気エアロゾルが酸化されていたとしても、大幅な表面張力の低下は観測されないと考えられる。
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