研究概要 |
本研究では,液晶モノマーの光重合過程で誘起される分子配向現象を解き明かすとともに,分子配向を複雑かつ高度に制御した液晶高分子フィルムを作製することを目的とする。 初年度は,液晶モノマーの干渉光重合を行い分子配向現象の解明に向けて知見を得ることを目的とし,液晶モノマーの合成および,光重合について検討した。また,アゾベンゼンを含む高分子フィルムに干渉露光を行い,誘起される分子配向変化を回折効率の観点から調べた。 1.液晶性モノマーの合成 光重合過程で誘起される分子配向現象においては,モノマーの異方性が大きな役割を果たすと予想できる。そこで,シアノビフェニル骨格にアルキルスペーサーを有するアクリレートおよびメタクリレートを合成した。また,光学異方性をもつ架橋剤として,ビフェニルジアクリレートを合成した。DSCを用いてモノマーの熱物性を調べたところ,モノマーが液晶性を示すことが明らかとなった。 2.モノマーの光重合 モノマー混合物に光重合開始剤を加え,厚さ5μmのガラスセルに封入した。モノマーが等方相を示す温度まで加熱した後,フォトマスクをかぶせ波長488nmのアルゴンイオンレーザー光を強度3mW/cm^2で10分間照射した。このフィルムを偏光顕微鏡で観察したところ,明部と暗部の境界において光学異方性が生じることが明らかとなった。 3.干渉露光による分子配向変化 アゾベンゼンでは光照射に伴い分子配向が誘起される。そこで,比較のためアゾベンゼン高分子フィルムを用いて干渉露光を行い,アゾベンゼンの分子配向挙動を検討した。アルゴンイオンレーザー光をフィルム上で干渉させると,分子配向に伴う屈折率変調が誘起され高い回折効率が得られた。
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