還元したチタン酸ストロンチウムが示す青色のカソードルミネッセンス、フォトルミネッセンスについて、Arイオンビームの照射による酸素欠損の定量的な評価を行った。放射光X線回折による構造評価から、酸素欠損による構造の歪みは深さ約21ナノメートルにまで及び、最表面層では約0.7%の歪が生じることが明らかとなった。この物質の特異な青色発光と酸素欠損による構造歪との相関を定量的に示したのは、この実験がはじめてである。 青色発光を示すチタン酸ストロンチウムと同じペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムの構造と発光特性についても検討した。チタン酸バリウム薄膜の発光特性では、基板のチタン酸ストロンチウムの発光と混在し、明確に分離するには至らなかった。しかしながら、チタン酸バリウム薄膜を成長する過程で、基板からの歪みを制御した薄膜を成長することに成功した。これにより、基板からの歪みうけた薄膜と歪みを緩和した薄膜を作成することに成功し、電子顕微鏡による観察から、明瞭な構造歪みの違いを検出した。さらに、チタン酸バリウムは強誘電体でもあることから、下部にSrRu03導電性電極材料を作成し、電圧引加による構造変化や発光特性の制御を試みている。基板上のSrRu03をエピタキシャルに作成し、このSrRu03電極上のチタン酸バリウム薄膜も基板格子からの歪みを受けたものと、格子緩和したものを制御して作成することに成功した。
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