研究概要 |
本研究では、グルコース酸化用電極を高機能化し、さらに、酸素還元用の酵素触媒電極を組み合わせて実用性を持ったmAレベルの電流出力を有する新しい酵素電極型生物燃料電池を開発することを目的とした。すなわち、これまでの生物電気化学研究の成果を発展的に応用・展開して、これまで出力が微小のために省みられなかったグルコース-空気生物燃料電池を新しい実用可能な燃料電池とするための研究を進めた。その結果、以下の結果を得た。 1)グルコース酸化極に関して,カーボンフェルト材料およびカーボンナノ材料を組み合わせて、またポリイオンコンプレックスフィルムを用いて,グルコース酸化酵素(GOD)およびメディエーターの安定な固定化が可能であることを示した。 2)ポリイオンコンプレックスフィルムおよび細胞膜類似のリン脂質系分子膜を用いて生体適合性を有する酵素電極を作製した。 3)カーボンフェルト電極に、CNT(カーボンナノチューブ)、カーボンナノ粒子等のナノ材料を組み合わせることで、ビリルビン酸化酵素の直接電子移動反応(メディエーターレス)による酸素還元が可能であることを示した。一方,グルコース酸化においては,カーボンナノチューブ修飾電極上で,グルコース酸化酵素の直接電子移動によるグルコースの省エネルギー的酸化(-0.4V vs. Ag/AgCl付近から)反応の可能性を示した。しかし,現時点では,電流値はせいぜいμAレベルでの極めて小さいものである。 4)グルコース-空気生物燃料電池の出力向上を図るため、電極の工夫(特に、カーボンフェルト電極を用いた表面積の拡大および3次元化やカーボンナノチューブを組み合わせた電極の安定化)によって、ミリアンペアレベルの電流出力を有する実用レベルの電池が構成できることを示した。これまでに,出力電圧0.6〜0.8V、電流出力1〜2mA/cm^2,出力電力0.5〜1mW/cm^2レベルの生物燃料電池を作製している。
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