次世代リチウムイオン二次電池正極材の研究は欧米だけでなく日本、中国、韓国を含む世界各国でその基礎・応用研究が推進されている。なかでも新材料探索は主要な研究課題の一つであり、主に鉄、コバルト、マンガン、ニッケルなどの遷移金属酸化物に研究が集中している。本研究では特に新物質トンネル型LiMn204(スピネル型ではない)に着目し、リチウムイオン二次電池正極材料としての特性向上をはかり、実用材料としての展望を開くことを目的とした。これまでに得られた主要な結果を示す。 (1)粉末中性子回折法および電子線回折法による構造解析によって、結晶構造モデルを精密化した。さらにa軸方向に3倍周期の超格子構造を確認した。おそらく、リチウムの部分的な欠損に伴う局所構造の変化を反映したものと思われる。 (2)実際に電池セルの中に組み入れてイオン伝導度を測定した。しかしながらリチウム伝導は殆ど認められなかった。母物質自体の実用材料としての可能性は限りなく小さいと思われる。 (3)磁化率、比熱などの測定を通して磁性を調べた。さらに得られた結果をスピネル型LiMn204のものと比較した。それによると、低温で磁気ガラス、転移が共通して観測されるなど、構造転移による磁性への影響はかなり小さいと思われる。しかしながらその原因を含め不明な点が多く、さらに実験の進展が望まれる。 (4)電気伝導度は半導体的であり、スピネル型LiMn204の特性と大きく変わらない。ただし、活性化エネルギーは約30%程度小さくなった。
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