層状ニオブ酸塩(K_4Nb_6O_<17>)の単結晶を水中で剥離させたナノシート液晶について、配向制御と光反応の探索との2方面から検討を行った。具体的には、(1)配向性基板を用いた液晶配向の規制、(2)液晶内における光誘起電子移動反応-を検討した。 ニオブ酸塩ナノシート液晶の配向規制については、配向性基板、すなわちSiO_2やTiO_2などの酸化物薄膜やポリイミドを被覆したガラス基板上で、ナノシートがどのように配向するかを検討した。その結果、これらの基板は、ナノシートを基板に対して垂直に配向させることが分かった。また、基板面内方向については、mmレベルで配向がそろったマクロドメインが形成された。いずれの基板を用いても、同様の配向挙動が観察された。また、液晶の配向制御法として頻用されるポリイミドのラビング処理を試みたが、配向への影響は観察されなかった。以上より、ナノシート液晶は種々の基板上で垂直配向してマクロドメインを形成することが分かった。これらの挙動は基板の種類によらないことから、ナノシートの配向は、基板-ナノシート間の相互作用よりもナノシートどうしの相互作用に支配されると考えられた。 一方、ニオブ酸塩と粘土との2種のナノシートを混合させたコロイド分散系を調製し、系内で生じる光化学反応を調べた。この系は液晶性を示し、系内ではニオブ酸塩と粘土が互いに相分離してミクロドメインを形成している。この分散系へ電子受容体を加えたところ、ニオブ酸塩ナノシートから電子受容体への光誘起電子移動が観測された。また、電子移動によって生じる電荷分離状態は、非常に安定であることが分かった。これより、ニオブ酸塩ナノシート液晶が、光反応の反応場となり得ることが示された。
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