研究概要 |
本年度は,前年度実施した「酸化モリブデンフラックス蒸発法によるアルミナセラミック基板表面へのコランダム単結晶皮膜の形成」の更なる深化とともに,「アルミナセラミック基板表面へのコランダム単結晶皮膜のエピタキシャル成長」研究を推進し,フラックス蒸発エピタキシー法の確立を目指す。はじめに,微細凹凸形状をもつサファイア(Al_2O_3)基板を用いて,ルビー(コランダム)単結晶皮膜の成長様式を観察した。その結果,フラックス育成した皮膜表面に,Al_2O_3結晶構造に起因する三角形や六角形の成長模様を観察できた。これらの成長模様はサファイア基板の欠陥を核として広がる様子が確認された。育成した結晶皮膜の特性を向上するためには,上述の成長模様の出現を抑制する必要がある。非鏡面サファイア基板は半透明であるが,フラックス(成膜)処理することで透明化できるといった特長も備えていた。次に,微細凹凸形状をもつアルミナセラミックス(三次元構造体)を用い,フラックス蒸発法による結晶皮膜コーティングの細線再現性を確認した。数百μmの凹凸形状やパターニングであれば,その形状を維持したまま,結晶皮膜を被覆できた。細線再現性がきわめて良好であるため,次年度以降,さまざまな応用展開を提案する。最後に,複数層の結晶皮膜コーティングを試みた。アルミナ材料表面にルビー結晶皮膜を被覆した後,イエローサファイア皮膜や希土類元素(Ln)含有Al_2O_3結晶皮膜による被覆を試みた。すると,下層のルビー皮膜とイエローサファイア皮膜は混じることなく,2層コーティングすることができた。また,同様の実験をAl_2O_3:Ln結晶皮膜を被覆したところ,選択的な光照射により特徴的な発光を観察できた。
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