電荷移動構造及び、ニトロ基やカルボニル基等の分極性置換基を有する芳香環系ポリマーを合成した。たとえばジニトロチオフェンは電子受容性単位であるのに対して、チオフェン及びジアルコキシベンゼンは電子供与性単位である。そして、この電子受容性単位と電子供与性単位が交互に結合して生成するポリマーは電荷移動構造を持つ。そして、この電荷移動構造及びニトロ基の分極作用により、同ポリマーには高誘導率が期待される。本年は、この様な分子構造を有する新規ポリマーを、パラジウム錯体を用いるC-Cカップリング反応等により合成した。得られたポリマーは有機溶媒に可溶であり、キャスト法により良好なフィルムとすることができた。そして、このフィルムについてLCRメーターにより誘導率を測定したところ、2.5以上の高い比誘導率を示すポリマーがあることが分った。また、ポリマーの電荷移動構造を明らかにする目的で、低分子のモデル化合物を合成し、その単結晶構造をX線回折法により明らかにした。この低分子モデル化合物は長い領域において電荷移動構造を有すると考えられる固体構造を有し、またその固体構造に基づく2次非線形光学発光現象を示した。
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