研究概要 |
回転対陰極型X線発生装置,ステージ,エネルギー分散型X線検出器,X線CCD,制限スリットなどを用いて,X線導波路現象を観測するための専用システムの設計・開発を行った.装置の基本性能を調べるために,真空蒸着したペンタセン薄膜試料を用い,薄膜内を伝搬するX線の挙動を調べた.薄膜の端面から放出されるX線をエネルギー分散型検出器により測定すると,X線導波路現象によって選択された一つのエネルギーのピークが明瞭に観測された.このエネルギー値より,薄膜の膜厚が算出されるが,それが水晶振動子によって見積もられた値と一致した.また,原子間力顕微鏡により測定したペンタセン薄膜の表面モフォロジーを観測した.その結果,約30nm程度の凸凹を持つアイランド構造を形成していることが分かったが,そのような表面ラフネスの大きな試料に対してもX線導波路現象が生じることが見出された. 放射光実験施設フォトンファクトリーの白色X線ビームラインBL3Cにおいて,強力白色X線を使用したX線導波路現象の予備測定を行った.迅速に全反射条件下にできるよう,試料のアライメントを行う方法を探索するとともに,有機薄膜における試料の照射損傷を評価した.1時間程度の照射でも試料が変色していることから,アッテネーターの導入が不可欠であることが分かった.また,空気散乱が無視できない程,強く観測されるために,光学系を工夫しなければならないことが分かった.なお,本年度には有機薄膜の相転移による高次構造の変化を敏感に観測するために,0.1度程度の温度変化を制御できる試料加熱セルを作製している.
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