研究課題
本研究では、地球上で資源的に問題がなく、しかも毒性のない元素であるSiとCのみを用いて、多接合太陽電池のトップセル材料を開発することを目的としている。具体的には、ストイキオメトリックなアモルファスSiCとシリコンリッチなアモルファスSiC_xを積層し、熱処理によりSiがナノ粒子(量子ドット)として析出することを利用した第3世代シリコン薄膜太陽電池の材料開発を行う。平成18年度は、ストイキオメトリー・アモルファスSiC(a-SiC)とシリコンリッチなアモルファスSiC_xの積層技術開発を行うとともに、作製したナノ粒子膜の構造評価、フォトルミネッセンス測定を中心に行った。製膜にはVHFプラズマCVD法を用いた。この手法では、まず、原料にモノメチルシランと水素を用いて、基板温度約300℃で基板上にa-SiC(A層)を作製する。A層の厚さは、10nm以下とする。ついで、モノメチルシランと水素にモノシランを加えてシリコンリッチなアモルファスSiC_x(B層)を製膜する。B層の厚さも10nm以下である。A層、B層からなる積層膜を数10サイクル以上作製し、その後、高温で熱処理をする。その際、B層で過剰となっていたSiがナノ粒子(量子ドット)として析出することを利用している。本年度の研究により、精度良く、しかも単純なプロセスで積層構造を作製する技術を開発することに成功した。As-grownの状態の積層膜を透過電子顕微鏡等により観察し、期待通りの積層膜が形成されているかどうか確認した。ついで、900℃の熱処理を行い、析出されてくるシリコンナノ粒子の大きさ、分布等を測定した。透過電子顕微鏡観察により、シリコン量子ドットが形成されている様子が明確に観察できた。また、低温でのフォトルミネッセンス測定を行ったところ、粒径が小さくなるにつれ、ブルーシフトする発光が観察され、量子ドットからの発光であることが確認された。
すべて 2006
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Jpn.J.Appl.Phys. Vol. 45, No. 40
ページ: L1064-L1066