これまでの研究により、ストイキオメトリー・アモルファスSiC(a-SiC)とシリコンリッチなアモルファスSiC_Xを積層し、その後で熱処理することにより、Siナノ粒子が析出し、禁制帯幅制御が可能なことが実証された。平成19年度は、これらの成果に基づき、作製した薄膜が太陽電池として応用可能なことを膜質評価、接合特性評価を通して明らかにした。 (1)ナノ粒子の密度やサイズの制御 積層膜のフォトルミネッセンス評価と量子準位に関する理論解析との比較検討により、積層膜の禁制帯幅を評価した。また、シリコンナノ粒子の密度やサイズによって、禁制帯幅がどのように変化するかを明らかにした。具体的には、禁制帯幅が1.1eVから1.6eV程度までの範囲で制御可能なことを実証した。 (2)欠陥準位の評価 スピン密度の測定により、禁制帯内の欠陥準位密度を評価した。また、熱処理後に水素アニールを行い、欠陥密度低減の可能性を探った。これにより、欠陥密度が1x10^18/cm^3台の膜質を得ることに成功した。 (3)接合構造による縦方向の電流輸送特性の評価 太陽電池に応用する際のポイントは、成長方向の電流輸送である。平成19年度は、量子ドット膜の表面側ならびに裏面側にp/n接合材料を形成し、p/i/n構造を作製することによって輸送特性の検討を行った。これにより量子ドットからのスペクトル感度を得ることに成功したが、量子ドット形成後の水素処理により、表面の構造が崩れ、これが界面特性を劣化させており、今後、p/i界面構造を改善すれば、大幅な特性改善が期待されることが分かった。
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