研究課題
今年度は、結晶構造が決定された包接化合物を用いて光学分割能の評価手法の開発を行うため、以下の研究を行った:(1)胆汁酸ステロイド包接結晶のエナンチオマー過剰率の解析:結晶解析済みの胆汁酸ステロイド-脂肪族アルコール包接化合物23種類のエナンチオマー過剰率(ee)を実験的に求めた。また、3-エピコール酸-2-ヘキサノール等の新規包接化合物を合成し、結晶構造解析とeeの解析を行った。この中から以降の検討に適切な結晶解析精度とeeを示す系として、コール酸アミド-2-ブタノール(以下CAM-BuOHと略)系、コール酸アミド-2-ペンタノール(CAM-PeOH)系を選択した。(2)ホスト-ゲスト相互作用の解析:CAM-BuOH系において(3)で述べる方法で構造を最適化し、S体、R体のゲスト-ホスト間の相互作用をMP2/6-31G*レベルで計算したところ、S体がR体よりも1.6Kcal/mol安定であった。また、CA-PeOH系においてS体の構造をR体の結晶構造を基に作成し同様の計算を行ったところ、R体がS体よりも2.6Kcal/mol安定であった。いずれの系においても安定な異性体は実験と同じであった。(3)分子間相互作用とエナンチオマー過剰率の相関の解明:(2)で計算したエネルギー差とボルツマン分布の式からeeを計算したところ、CAM-BuOH系では87%、CAM-PeOH系では97%という値が得られ、実測値(17%および30%)とは一致しなかった。この理由としては、構造最適化に用いた既存の力場パラメータの精度が不十分であるため、拘束条件の選択方法によって水素結合部位の構造などが大きく変動することなどが考えられる。現在利用可能な力場パラメータを使用する場合は、結晶構造をもとに(1)格子定数、(2)ホスト分子の骨格、(3)ゲスト分子の水酸基を固定し、ホスト分子のsp3炭素に結合する水素とゲスト分子骨格を最適化するのが最善であることがわかった。19年度は、力場パラメータの改善などにより計算精度を向上させ、構造未知の包接化合物の光学分割能の予測を行う。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Journal of Physcal Chemsistry A 111巻5号
ページ: 753
Journal of Physcal Chemsistry A 110巻33号
ページ: 10163
Crystl Engineering Communication 8巻6号
ページ: 462