研究課題
結晶構造未知の包接化合物のS体、R体のエナンチオマー過剰率(ee)を予測する手法の確立に向けて以下の研究を行った。(1)eeが未知のゲストの位格構造の予測包接構造の予測を可能とするため、胆汁酸ステロイド-光学活性アルコール包接結晶を用いてホスト分子によるケスト分子のキラル認識機構を詳細に解析した。その結果、従来の三点モデルによる認識では結晶形成時に十分なキラル認識がされず、2-t-ブチルブタノールおける不斉炭素部位の水素原子など、4点目が認識されることで初めて高いeeが得られることがわかった。このことから、ゲスト分子の構造から包接結晶が光学分割能の高い構造をとるか否かを予測でぎざことがわかった。(2)ホストーケスト相互作用の解析と光学分割能の予測分子力場計算を用いた構造最適化計算の精度を向上させるため、有機結晶に対する精度が高いと言われているWilliamsのパラメータを導入したが、期待どおりの結果が得られなかった。力場計算では水素結合の方向性を正確に評価できないためと考えられる。そこで、電荷の空間分布から静電エネルギーを評価できる密度汎関数計算(DFT計算LPW91」)を試みた。コール酸アミド-2-ブタノールを用いた計算の結果、実際の結晶構造にかなり近い構造が得られた。S体、R体め構造か最適化し、abinitio分子軌道計算(MP2/6-31G*レベル)で分子間相互作用を計算したところ、S体が0.72kcal/mol安定という結果で得られた。(3)eeの予測精度の検証上記の結果は力場計算による最適化で得られた2.26kcal/molという値よりも実際(0.2kcal/mol)に近く、DFT計算による構造最適化の妥当性が示された。以上のことから、計算科学的手法により包接結晶の光学分割能を予測するために必要な手順が明らかとなり、目標をほぼ達成することができた。
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Crystal Growth and Design 10
Physical Chemistry Chemical Physics 10
Chemical Communication
ページ: 4257-4259