研究概要 |
社会の高度情報化とデバイスの小型化に伴い、半導体や超伝導体などの先進材料のみでなく、スピンエレクトロニクスのキーマテリアルであるといった観点などから、金属材料に関しても細線形状などのナノ構造創製については様々な応用につながるものと期待されている。従来、金属単結晶薄膜は金属を原料とした蒸着法やスパッタ法で作製され、そのナノパターニングには電子線描画技術といった非常に複雑で少量生産向きの方法で行われてきた。本研究では金属酸化物を出発点として、酸化物薄膜の自己組織化現象を利用することによりナノ構造を作製し、それを水素還元して金属ナノ構造を大面積に、しかも簡単に構築する事を目指す。本研究の目標は、種々の酸化物単結晶薄膜を水素などで還元した時に起こる結晶構造の変化に関わる系統的な材料相関を調べ、そのメカニズムを明らかにした上で、金属単結晶薄膜をベースとした新規金属ナノ構造作製のための新たなナノプロセス技術を確立し、金属・酸化物ナノハイブリッド材料の創製および新規デバイス開発につなげることである。これまでに,PLD法による遷移金属酸化物エピタキシャル薄膜の作製と自己組織化による酸化物ナノ構造の構築を行った。レーザーアブレーション(PLD)法を用いて原子ステップを有する単結晶サファイア基板上に、NiO、 CoO, MnOおよびそれらの混合系遷移金属酸化物薄膜を低温・低エネルギーで単結晶成長させる最適化条件を探った。次にこれらの酸化物薄膜を雰囲気を調整した管状炉で高温加熱して、自己組織的に再配列を起こさせて酸化物ナノ構造や量子ドット構造を構築を試みた。その結果,NiO酸化物ナノ構造の構築に成功した。また、水素還元法による強磁性金属の単結晶薄膜の作製と構造・物性評価:酸化物薄膜および酸化物ナノ構造体を水素雰囲気中で加熱還元することにより、Ni,Co,あるいはMnなどの遷移金属の単結晶薄膜および金属ナノ構造を得るための条件を調査した。さらに、水素還元されにくい酸化物とされ易い酸化物の積層構造を構築してから、水素還元によって金属・酸化物積層単結晶膜の作製を試みた。
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