本研究課題の目標は、(1)CNT/生体分子ナノ集積デバイスの要素技術へ向けた生体適合性基板の創製、(2)CNTのバイオ・医療応用へ向けた生体適合性基板の創製、の2点である。この目標に向けて、CNTネットワーク構成技術と生体分子・固体基板とCNTとの構造制御を行った。 CNTネットワーク技術については、化学気相成長(CVD)によるネットワーク形成と、溶液分散特性制御によるシート形成の両面から検討を行った。化学気相成長においては、CNT表面からのCNT接木・ダイヤモンド/CNT複合材料、などの技術を開拓した。一方、CNT分散制御では、種々の分子・生体物質による分散特性を調べ、単分散に適した分子構造を明らかにした。環境適応型走査プローブ顕微手法(SPM)を用いて、CNTネットワークのマニピュレーションを行い、バンドルの分離切断、移動、融合、などの基本操作技術を確立した。また、架橋CNTバンドルの空間操作技術の開拓を行った。生体分子固定については、まず固体基板上での振る舞いを明らかにするため、たんぱく質分子の吸着力を環境適応型SPMによって評価する技術を立ち上げた。ついで、医療応用を目的のひとつとして、CNT表面への生体関連物質の吸着を分光学的に調べる手段を開拓した。18年度は、血液中のビリルビンを吸着除去することを目的に、アルブミン/ビリルビン混合溶液のCNTへの吸着量を評価した。 これらを通じて、生体適合性基板として分散系CNTシートを取り上げ、生体適合表面の細胞工学への応用として、高効率遺伝子導入を試みた。遺伝子導入については、エレクトロポレーション法を用い、生きている細胞、及び遺伝子の発現(蛍光タンパクの発現)により評価した。ばらつきがまだ大きいので、引き続き検討を進める。
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