本研究では、高温加圧加工法により、X線の一点集光が可能なモノクロメーター用ゲルマニウム結晶レンズを作製することを目的とした。まず、既存の加工装置で、SiやGe結晶ウェハーの高温加圧加工が可能な条件・範囲を精密に決定した。加工温度、荷重、加工時間等をパラメータとして、系統的な加工実験を行った結果、融点近傍の温度において、ゲルマニウム単結晶ウエハーを任意の形状に加工できる条件が明らかとなった。また、面方位の異なるウエハーに対して、それぞれ加工性を調べた。いずれのウエハーに対しても、良好な加工を施せる条件が明らかとなった。高温加圧加工後の結晶に対して、透過電子顕微鏡観察により転位密度の測定を行った結果、より高温で変形した結晶ほど転位の導入量が少なく結晶性がよいことがわかった。 この加工条件をベースに、曲率半径が30mm〜600mmの範囲の、さまざまな焦点距離を持つゲルマニウム結晶レンズの作製を試みた。これらの結晶レンズに対して、光学顕微鏡、電子顕微鏡観察およびX線回折により結晶評価を行い、設計どおりの曲率を有する結晶レンズが得られているか確認した。ウエハーのエッジ部において、変形量が不足する領域が存在するものの、概ね目的の曲率を有するゲルマニウム結晶レンズが得られた。実際にX線を用いて集光試験を行ったところ、ゲルマニウム結晶レンズの曲率に応じた焦点位置において、X線が集光することが確認された。
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