本研究では、毛髪を利用し二つの目的で機能針の作成を行った。一つ目は毛髪に導電性を持たせる表面処理を行う電極針である。これは脳内を自由に移動でき、ピンポイントで直接脳細胞に電気刺激を与えることができる脳探査用針を目指す。二つ目は毛髪の成分を溶出させ中空にすることにより投薬・採血ができる留置針である。毛髪は生体材料であるため、生態適合性にすぐれ、直径が100μm以下であるため無痛針にもなる。また、軸方向の強靭性としなやかさを兼ね備えてもいる。これらの針を作るために必要な毛髪加工の基礎検討を、めっき、樹脂コーティング、貫通穴あけ、先端処理について、おこなった。 (1)中空針の作製 毛髪を溶液に浸し、中心部分を溶かし出すことで貫通穴をあけ、薬品・血液の流れる流路として利用できるようにする。また、レーザーによる穴あけも実施する。その結果、 ・2倍に水で薄めた塩素系漂白剤に10分浸すことにより、長さ300μm以上の溶出を確認できた。中空部は400μm前後だと考えられる。 ・樹脂コーティングにより毛髪表面の保護が可能であり、これにより同上の条件で中空部は500μm前後得られたと考えられる。 ・フェムト秒レーザーによる穴あけでは数十μmほどの穴が確認された。 (2)先端加工 レーザーによる微細加工とナイフによる切断を用い、毛髪を先端角度15°の針形状に加工する。その結果、 ・PFAチューブに挿入することで、レーザーの熱影響を軽減でき、先端角度15°に加工することができた。 (3)電気導通針の作製 毛髪へめっきを施し、その後、絶縁用の樹脂をコーティングし、脳細胞にピンポイントで電気刺激を与えることのできる電気導通針を作製する。その結果、 ・ニッケルめっき厚3μmで電気抵抗率は0.414mΩmとなった。 ・変性ふっそ樹脂コーティングにより絶縁が可能である。
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