本研究では、毛髪を利用し二つの目的で機能針の作成を行った。一つ目は毛髪に導電性を持たせる表面処理を行う電極針である。これは脳内を自由に移動でき、ピンポイントで直接脳細胞に電気刺激を与えることができる脳探査用針を目指す。二つ目は毛髪の成分を溶出させ中空にすることにより投薬・採血ができる留置針である。前年度からの課題として、(1)脳探査用針における導電性めっきの付着力向上、(2)中空針作製において毛髪個人差による成分溶出状態の把握、(3)留置針作製において毛髪とマイクロ流路の接合、があった。これらの課題解決のための実験をおこなった。 (1)めっき付着力:無電解ニッケルテフロンめっきを毛髪に施す際に、毛髪の表面処理条件、めっき厚を変化させて作成した導電性毛髪を鶏のもも肉に突き刺し、付着力と刺突力の実験をおこなった。その結果、 ・前処理としてIPA液を用いた超音波洗浄により付着力が向上することがわかった。 ・めっき厚3μmの毛髪が1番安定した力で刺すことができた。 (2)中心部溶出:毛髪を塩素系漂白剤、エタノール、クロロホルムを希釈または混合した溶液に浸し、中心部分を溶かし出すことで貫通穴を空ける実験をおこなった。その結果、 ・3人の毛髪で毛髄質(メデュラ)の溶出速さと形状の比較では、ほとんど溶出されないものもあり、個人差が大きいことがわかった。 ・上記の毛髪で最も効率よく穴が空けられたもので中空部は500μm前後得られた。 (3)接合:幅100μm深さ45μm長さ10mmの樹脂流路にラミネートで中空針を挟み込み固定する実験をおこなった。溶出後の毛髪は脆くなっておりラミネート時に破壊したが、変性フッ素樹脂コーティングを施すことによりラミネート材に挟み込むことができた。
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