本研究ではカーボンナノチューブ(Carbon-Nanotubes:CNT)薄膜の超撥水性に注目し、任意形状を有するマイクロ/ナノ流路の創製を試みてきた。CNT薄膜を基板上に成長させる場合、触媒の配置によって任意位置にCNT薄膜を作成することが可能である。したがって、親水性基板上にCNT薄膜をパターン作製することにより、マイクロ/ナノ流路の創製が可能である。すでに前年度、シリコン酸化膜上にメタルマスクと熱CVD(Thermal chemical vapor deposition)法による直線、分岐、合流、連続屈曲、さらにはフェルマー螺旋形状を有するCNT薄膜流路の作成に成功し、マイクロシリンジを用いた水導入の実験にも成功した。しかしながら、CNTとシリコン酸化膜の密着性が低く、場合によっては水の圧力でCNTの剥離などが生じ、水の導入が困難な場合が存在した。 そこで、本年度はCNT薄膜と基板との密着性を高めるために、陽極酸化アルミニウム(AAO;Anodized Aluminum Oxide)の形状が均一な細孔を鋳型として、そこにCNTを作製するテンプレート法を用いてCNT薄膜の作製を行った。このAAOテンプレート法で作製されたCNT薄膜はCNTの根元が細孔内に留まることから、シリコン酸化膜基板よりも高い密着性を有していた。マイクロ摩擦試験の結果、シリコン酸化膜基板では極低荷重で容易に剥離していたCNT薄膜が、AAO上では20〜100μN以上の荷重下においても剥離が観察されなかった。このようにAAOを用いることで、耐久性を持つマイクロ/ナノ流路の創製が達成できると思われる。 本研究成果に関し、JSTのシーズ発掘試験に応募し実用化試験を目指すとともに、産業財産権の取得を考えている。
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