本研究では、分子レベルから連続体レベルまでの全てのレベルの流動現象を自己完結的にシミュレーション可能な完全統合(オールインワン)解法の開発を目指して、現在完成しつつあるボルツマン/ナビエ・ストークス統合解法(続体レベルから分子の平均自由行程レベルまでの流動現象を自己完結的にシミュレーション可能な解法)と強結合可能な分子動力学解法を新たに研究開発し、近い将来に自己完結的な分子動力学/ボルツマン/ナビエ・ストークス完全統合解法を構築するための確固たる礎を築くことを目的として研究を行ってきた。平成20年度は、特に、時刻や場所ごとに適用される解法が自動選択される方法の研究と計算時間の短縮を目指したデカルト格子標位セル法の研究を主に行った。その結果、デカルト格子標位セル法は、従来法と比べて70%以上の計算効率の改善が達成され、計算負荷の削減が大きな課題である分子動力学法では非常に有効であることが確認出来た。また、デカルト格子標位セル法は解法の自動選択や分子速度分布関数から粒子(分子)群を生成する際や粒子(分子)群から分子速度分布関数を形成する際にも利用できることが確認出来た。しかしながら、分子動力学法の計算負荷は、依然としてボルツマン/ナビエ・ストークス統合解法の計算負荷と比較して多大であり、分子動力学/ボルツマン/ナビエ・ストークス完全統合解法の実用化には更なる研究が必要であることも確認された。
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