研究概要 |
蚊の吸血機構をμ-TASに流体駆動源として搭載するサイズが1mm以下のマイクロポンプシステムを実現することが本研究の目的である.主に,ポンプ非定常性能を直接計測することと吸血管内の非定常流量変化を調べることを行う.具体的には,蚊のポンプにおける運動性能を計測すること,原子間力顕微鏡である生物顕微鏡により吸血管の内壁面の性状を計測すること,吸血管内の流れの速度分布を計測し,壁面と流れの干渉を明らかにすることである.これらを元に,マイクロポンプを製作する.本年度は以下のことを行った. 1.吸血針内の速度分布計測 吸い込み流量をPIV計測し,一度の吸い込みにおける非定常流量変動を計測した.生きたままの蚊を顕微鏡下で固定し,大気圧下において血液を吸わせた.この際,下の腹部にある満腹かどうかを判定するレベルセンサーとなる部分はあらかじめ取り除き,腹部には穴をあけておく.これにより,ポンプ入口と出口においては大気圧となり,ポンプで発生する圧力の影響だけを取り出すことが出来る.この方法を用いると,蚊は吸い込みを長時間続けられるようになり,吸血における流れの計測が可能となる.この点が本研究における独創的な点であり,従来計測が困難であった生きた蚊の吸血を詳細に調べられるようになった技術である.赤血球をトレーサーとしては共焦点顕微鏡を用いたマイクロPIVシステムを用いて計測を行った.この結果、一回の吸い込み動作において、管内速度が2回のピーク値を取ることがわかってきた.すなわち,頭部にある2連の直列ポンプの相互動作が関与しているものと考えられる.このことから次に示すX線源を用いた頭部の透過画像計測を行い,ポンプの運動を調べた. 2.ポンプの運動解析 蚊のポンプは直列な2つのポンプで構成されている.この2つのポンプの間には逆止弁が付いており,2つのポンプは逆位相で運動することが生体系の研究によっている.本研究では流量とこれら2つのポンプの運動特性との関連を明らかにし,それぞれの性能を特定するために,ヨウ素を混ぜた水を生きた蚊に吸わせ,X線を用いて蚊のポンプ運動を撮影し,吸血脈動流との相関を明らかにした.この撮影は世界初であり,現在論文にまとめている.
|