研究概要 |
本年度はMEMS加工とコロイド結晶の自己組織化を応用した赤外線フォトニック格子の作成と,赤外線評価装置の製作を行った。始めに,昨年度のSi(110)面の単結晶ウエハーにおける加工方向と酸化膜によるレジストの効果の知見と作製した精密XYテーブルを応用して,赤外線フォトニック格子を作成し,そこから出る赤外線放出の評価を試みた。まずウエハーに既存の電気炉で酸化膜をつけレジスト膜とし,ダイヤモンドバイトを使って格子状に超微細加工を施した。超精密XYZステージにより,0.1μmの精度で,5μm幅の格子を作成できた。次に全体を50-80℃の温度下でKOHにより異方性エッチングを施したところ,20μmの間隔,10μm深さの1次元フォトニック格子を得ることができた。この格子は,正面から20μmと9.2μmの波長にピークを持つ赤外線放出特性を示した。次に本研究では,さらに細かな周期のフォトニック格子を得るために,マイクロビーズを加えた脱イオン水から引き上げ法によりコロイド結晶を作成した。これにより従来は得られなかった12μm径のマイクロビーズからなる赤外線格子を作成することができた。また本研究では,この格子の赤外線放出特性と角度および偏光の関係を評価するために,MCT半導体赤外線センサーと赤外線回折格子,グリッド型赤外線偏光フィルターを用いた新たな測定装置を作成した。試料を半導体レーザで加熱したところ,400℃で赤外線の分布が測定できることを確認している。 現在のところ大きな間隔のフォトニック格子しか作成できていないことから,バルクな温度分布の変化に及ぼす影響は評価できていない。次年度では,微細加工技術の精度やコロイド結晶の作成技術を高めることにより,プラズモニクスによる温度制御の可能性を評価したい。
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