本年度は、爆発衝撃でアルミニウム板表面に分散させたナノダイヤモンドが金属片内部に浸透した際の熱衝撃波の発生とその機構について検討した。得られた結果を以下に纏める。 1.ナノダイヤモンドを浸透させることで、肉厚が1ミリのアルミニウム板の熱伝導率が増加することを確認した。 2.数値解析用のコードを開発した。通常使用されている熱伝導方程式には緩和時間が含まれていない。そこで、緩和時間が含まれているマックスウエル方程式を用いてコードを作成した。この方程式は楕円型であるので、解の精度と安定性を考慮し、方程式はMacCormak's predictor-corrector スキームを使用して離散化した。その数値解析を行い、極薄フィルム内に熱衝撃が発生することが分かった。 3.フィルム内部の挙動を詳細に把握するために、分子動力学の数値解析コードを開発した。その結果、フィルム内で温度の急激な上昇部分が時間と共に移動することを確認した。 4.フィルム内の高温部の温度上昇領域は分子運動が活発である。また、その領域は時間と共に拡大するのではなく、局所領域が時間と共に移動することが分かった。 5.温度上昇領域(overshot temperature という)は、時間の経過と共に減衰していく。十分時間が経過した時の温度分布はフーリエの法則で求められる分布に変化していくことを明らかにした。
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