研究概要 |
本研究は,超指向性超音波スピーカとバーチャルセンシングを組み合わせることで,バーチャルアクティブノイズコントロールを実現することを目的としている.今年度は,超音波暴露の人体への影響に関する調査から始め,次に,超音波スピーカと従来のマイクロホンによるアクティブノイズコントロールを提案した.各々の概要を以下に示す. (i)超音波スピーカは非常に振幅の大きい有限振幅音波の超音波を使用するため,実際に超音波スピーカを音響機器として使用していく前に,超音波暴露の人体への影響に関して調査する必要がある.超音波暴露に関しては各国において基準が設けられている.しかしこれらの基準は周波数・音圧関しては策定されているものの,スピーカからの距離や暴露時間に関しては統一されておらず,記載がないものも存在する.不必要な不安を払拭し,有用な技術の開発を阻害しないため,様々な条件が不統一であった超音波暴露に関する文献を調べ,生理的障害を一元化した図を作成した.この図から,50Hz-70Hzの周波数においては,137dB以下の範囲での超音波ピーカの使用が推奨される. (ii)アクティブノイズコントロールでは騒音を抑制するために,マイクロホンとスピーカを設置し,騒音と同振幅・逆位相の制御音を出力する.全体的な効果は,ターゲットとした部分では騒音抑制が達成されるが,他の大部分の空間では逆に騒音が増加してしまう.そこで,仮想的なスピーカを一直線上に生成することができる超音波スピーカを制御音源として使用することで,全体の騒音を増加させることなくターゲットとした部分の騒音を抑制する手法を提案した.さらに,実際に制御系を構築し,当該手法の有用性を実証した.
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