研究概要 |
最近、医療の分野で注目されている活性水素は、癌細胞を通常の細胞のように寿命のある細胞に還元することにより死滅できる効果があることが報告されている。本申請課題では、水素吸蔵合金から放出される活性水素に注目し、癌細胞のピンポイント治療器具としての応用を目指す。そのために、水素吸蔵合金として生体適合性に優れ加工しやすいVおよびPd合金を用い、脱蔵時の水素放出を調べることを目的どした。合金の最適組成を調べるために、V-2,3,4at%TiおよびPd-11,12at%Ni合金のPCT曲線を測定した。その後、活性化処理を行ったPd-Ni合金をガラス製注射器に入れ放出水素を測定した。V合金は活性な金属であるため、表面性状の悪化の問題から正確なPCT曲線を得ることはできなかったが、Pd合金では、水素分圧1気圧近傍で水素の放出が可能な最適組成は、Pd-11at%Ni合金であることがわかった。そこで、Pd-11at%Ni合金を用いたマイクロニードル水素放出実験を行った。生理食塩水にPd-Ni合金を直接入れて測定すると、水素気泡の発生とpHの減少が確認できたことから、Pd合金から水素が放出され、その一部は活性水素として放出されたことが示唆された。しかし、予想された水素放出量よりも少なかったことから、活性化処理後から水素放出実験にいたるまでに水素が放出している可能性が示唆された。そこで、今後は取扱を容易にし、より多くの水素を放出できるように、より低い水素分圧で水素を放出可能な合金組成のPd合金を作製して実験を進める必要があることがわかった。
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