磁気誘導ドラッグ・デリバリーの有効性を検証するために、実際の磁性薬剤と永久磁石を用いたin vitro実験を行いった。ネオジウム系の直径20mmの永久磁石の磁極正面に磁極面と平行に血管を模擬したガラス管を配置し、ガラス管(模擬血管)内に磁性薬剤を混ぜた純粋をポンプにより流して、ガラス管径、ガラス管と磁極間の距離、流速を変化させて磁界による磁性薬剤の滞留効率について調査し、実際に磁界により薬剤が滞留できることを検証した。また、直径20mmの磁極の縁部付近のガラス管にもっとも磁性薬剤が滞留することがわかったが、この観察結果と数値電磁界解析による磁気力分布を比較検討した。 これらの永久磁石による小規模なin vitro実験の結果を踏まえ、数値電磁界解析によって超伝導磁石による磁気誘導ドラッグ・デリバリー・システムのための磁界配位について検討し、永久磁石によるシステムと比較した。その結果、超伝導磁石によれば永久磁石では不可能な体内深部での磁気誘導ドラッグ・デリバリーが可能であること、また、永久磁石の場合とは磁界分布が異なり、それを考慮したマグネットシステム設計は必要であることを明らかにした。特に超伝導バルク磁石の場合、磁極面中心付近の磁気力を有効に利用したシステム設計が重要である。また、当面の超伝導マグネットシステムとしては超伝導バルクを用いたシステム構成が適当であることを提示した。さらに、横浜市立大学医学部スタッフとの討議を通して、超伝導磁気誘導ドラッグデリバリーの具体的適用疾患の候補を調べた。
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