研究概要 |
磁化容易軸が等方的に分布したTerfenol-D[(Tb_<0.3>Dy_<0.7>)Fe_2]について,マイクロマグネティクス理論に基づく計算機シミュレーションにより,その結晶粒径と磁歪及び軟磁気特性を計算し,結晶粒径が限界値より小さくなると,軟磁性が著しく改善され,低磁界で大きな磁歪変化が生じることを明らかにした。Terfenol-Dに対して報告されている物性定数を用いて計算された限界結晶粒径は,約20nmであった。また,磁気異方性定数と飽和磁気歪みを変化させて計算した結果から,磁気異方性エネルギーに比べて磁気歪エネルギーが支配的になった時に,軟磁性が著しく改善されることを見いだした。クリティカルな軟磁性化の原因について,理論式及び数値解析により研究した結果,磁気歪みを有する材料では,磁気弾性エネルギーの抑制のために,各結晶粒の磁化が平行あるいは反平行に揃う傾向があることが明らかとなった。ナノ結晶材料においては,結晶粒間の交換相互作用により各結晶粒の磁化方向の整列し,その結果等価磁気異方性が減少して軟磁性が改善されることが広く知られており,磁気歪みでも同様な効果を有することを見いだした。 さらに,Terfenol-Dとa-Feから構成される等方性複合超磁歪材料について,磁歪特性及び軟磁性を計算機シミュレーションし,a-Feを30vol.%程度まで増加させても,単結晶Terfenol-Dを超える(dλ/dH)max(dλ/dHの最大値,λ:磁気歪み,H:印加磁界)が得られることを明らかにした。このことは,磁歪材料の複合化により,希土類量の低減及び耐酸化性の改善が達成されることを示唆している。
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