研究概要 |
本研究で我々は,Blasiusにより提案されているCAM植物1細胞モデルを用いてし,CAM生体リズムモデルを制御理論の立場から取り扱っている。これまで我々は,内部二酸化炭素量,細胞質のリンゴ酸および液胞内のリンゴ酸が観測可能と仮定し,測定するのことのできない分子レベルである液胞膜並びの巨視的平均値zや熱力学的平均場近似を用いて得られる液胞膜の非線形特性を推定する適応オブザーバを提案している。しかしながら,シミュレーションにより推定性能を検証しているが,安定性の証明に課題を残していた。また,我々は,推定した液胞膜並びをフィードバックすることにより,生体リズムの周波数を制御するには,限界があることを数値シミュレーションにより,指摘した。さらに,観測できる状態量を内部二酸化炭素量に限定した適応オブザーバを設計したが,液胞膜の非線形特性が未知の場合には,十分な性能が得られていなかった。そこで,今年度は,CAM生体リズムのダイナミクスにおいて,内部二酸化炭素量,細胞質のリンゴ酸が速い応答をするため,これをslow manifoldと呼ばれる代数方程式で近似することにより,2次ダイナミクスを持つslow systemを構成した。 さらに,このslow systemを用いて,液胞膜並びと非線形関数を推定する1次元の適応オブザーバの構成し,その安定性を証明した.提案したオブザーバでは,入手可能な状態量は,内部二酸化炭素量および液胞内のリンゴ酸とすることができ,細胞質のリンゴ酸はslow manifoldを用いて,内部二酸化炭素量から近似値を求めることができることを示した。最後に,設計したオブザーバの性能をMATLAB/Simlinkを用いて検証した。
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