本年度は、昨年度の成果を踏まえ、内部鉄筋周辺にコンクリートはく離を模擬した供試体を新たに作製し、検討を行った。コンクリート表面近傍から電磁パルスにより内部鉄筋を振動させ、振動によって生じた弾性波をコンクリート表面の振動センサで記録し、解析した。その結果、はく離のない健全供試体において、供試体中央部以外のコンクリート表面で得られた波形エネルギは、ほぼ一定の値となることが確認された。また、はく離供試体において、「はく離部」と「健全部」との境界部の直上で得られた波形エネルギは、「健全部」直上で得られた波形エネルギよりも大きくなることが明らかとなった。さらに、コンクリート表面における複数の計測点で得られた弾性波の波形エネルギの分布状態から、はく離箇所の分布状態が把握できる見通しが得られた。 一方、電食により内部の鉄筋を腐食させた鉄筋コンクリート供試体において上記と同様の計測を行った。その結果、鉄筋腐食による膨張圧により鉄筋とコンクリートとの間にはく離やひび割れが発生し、鉄筋の振動状況が変化し、コンクリート表面での受信振幅が変化することや、鉄筋腐食により断面積が減少することによる断面剛性の低下に起因する振動特性の変化などから、受信波の波形エネルギが変化する可能性があることなどが明らかとなった。
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