研究概要 |
山口県の宇部,小野田,周南の3つのコンビナートに風速計を設置し,風況の定点観測を開始した.同時に風速計設置地点周辺において,小型ドップラーソーダを用いた短期観測を行った.風速計による長期観測データと小型ドップラーソーダによる短期観測データの相関関係を求めることにより,小型ドップラーソーダ地点の風況を予測する手法について検討した.さらに,その予測精度を向上させるため,風速計と小型ドップラーソーダの相関関係に加え,風の発生要因である気温や気圧傾度の情報を考慮した重回帰分析により予測した.その結果,風速データ単独で予測するのに比べ,気温や気圧の情報も加えて予測することにより,予測精度を飛躍的に高めることに成功した.気温や気圧のデータは,近隣のアメダスなどの気象官署のデータを用いているが,風速データもアメダスのデータを用いて予測したところ,われわれが設置した風速計のデータを用いた場合と同等の精度で予測可能であることも明らかとなった. このような予測手法を用いれば,小型ドップラーソーダの機動性を活用したさまざまな地点での短期観測により,広範囲における風況を高精度に求めることが可能である.通常であれば風速計設置地点の1カ所の風況しか得られないが,小型ドップラーソーダとの連携により多地点での風況を明らかにできる.この予測手法を応用すれば,小型ボートなどを用いたドップラーソーダ観測により,コンビナート沖の洋上の風況も高い精度で明らかにできる可能性がある.
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