研究課題/領域番号 |
18656138
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
灘岡 和夫 東京工業大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70164481)
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研究分担者 |
浜口 昌巳 独)水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 研究室長 (60371960)
田村 仁 独)海洋研究開発機構, 地球環境フロンティア研究センター, 研究員 (80419895)
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キーワード | マイクロサテライト / サンゴ礁生態系 / オニヒトデ / 大量発生 / 集団解析 / 分子生態 / 幼生分散 / 黒潮 |
研究概要 |
昨年度開発したオニヒトデのマイクロサテライトマーカーを用いて世界規模での集団遺伝学的解析を行った。解析した海域は、日本国内では、日本におけるオニヒトデのハビタットをほぼ網羅した和歌山県南端の串本から石西礁湖にわたる10地点及び、海外ではフィリピン、パラオ、ポンペイ、マジュロ、フィジーで、合計15地点から採集したオニヒトデ集団を対象とした。その結果、以下の大きく4つのグループが検出された。1)南半球にある遺伝的に最も離れたフィジー2)北太平洋の中心部に位置するマジュロとポンペイ3)4つ目のグループに遺伝的にも近いが一応分化しているパラオ4)はっきりとした集団構造の検出できなかったフィリピン及び日本国内全ての集団。また、解析の対象を全集団で見た場合、地理的距離が離れるほど遺伝的距離も比例して離れていくというIsolation by distance(IBD)が成立しており、世界規模ではオニヒトデ集団は遺伝的に分化している、すなわち幼生分散が制限されていることが示された。一方で、解析の対象をフィリピンと日本の集団のみに限定した場合、IBDパターンは成立せず、遺伝子流動が遺伝的浮動の効果を上回っている、すなわち、幼生分散による遺伝子流動が起こっていることが示唆された。さらに、フィリピン及び日本集団のリーフコネクティビティーの鍵であると考えられる黒潮を再現したJCOPEモデル上で、幼生分散を模擬した粒子追跡の実験を行った。それぞれの海域における産卵期に模擬幼生粒子を投入したところ、黒潮とそれに関連して形成される渦等により、フィリピンから日本へ幼生が供給される可能性及び日本国内においても互いの海域へ幼生が行き来する可能性が示唆され、マイクロサテライトマーカーによる集団解析結果と合致する結果となった。
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