研究概要 |
本研究は,交通渋滞問題に対する新しい方策として,数量規制アプローチの考えを発展させた,以下のスキームを提案する:渋滞が頻発している特定のボトルネック地点を対象として,そのボトルネックを特定の時刻のみ通行できる権利("ボトルネック通行権")を設定・発行し,その時刻別の通行権を自由に取引(売買)できる市場を創設する.そして,この制度の理論的特性,及び最適implementation法を解明することが本研究の目的である.より具体的には,H18年度の研究では,単一ボトルネック・システムを対象として,この制度の特性を理論的に考察した.そのために,まず,制度導入前後の各々の場合の均衡状態を定式化した.そして,その数理構造を解析することによって,提案制度が以下の特性を持つことを明らかにした:(1)ボトルネック容量に等しい数量の通行権を発行・配布することによって,確実に渋滞を解消できるのみならず通行権取引市場で適切な通行権価格体系が実現する,(2)その結果,制度導入前と比較したときにパレート改善状態を達成できる,(3)制度導入後の資源配分状態は,パレート最適状態である.これらの特性の証明を通じて,この制度導入下での均衡状態を表現する問題と都市経済学における立地均衡問題は,数理的に同形であることを示した.また,提案制度は,道路管理者が需要情報に関して必ずしも完全な情報を持たない(という現実的な)状況では,混雑料金制よりも必ず優位な結果をもたらすことを示した.さらに,管理者が利用者に通行権を販売するスキームでの収入総額と最適な道路容量増強投資との関係を解析し,self-financing原則が成立することも明らかにした.
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