研究課題
本年度は、住宅市場に本来備わっている、業者と家計の間の住宅品質に関する情報の非対称性の問題に焦点を当て、これを防ぐ枠組みである性能照査型契約の有効性について証明した.性能照査型契約とは、設計段階と施工段階の二段階の検査の実施とそれらの検査と関連付けた報酬契約であり、二段階の検査精度が十分であれば、社会的に効率的な契約が成立しうることが示された.このような検査体制と報酬スキームの構築が、社会的に効率的な耐震改修契約の締結へと結びつきうることを示した点は、今後の耐震改修を促進させる上での重要な政策的示唆といえる.さらに、本年度は、検査機関の導入の際の問題点である、検査機関自体の信頼性の問題にも焦点を当てた.業者をチェックする検査機関の信頼性が欠如した場合、業者と家計の間の情報の非対称性の問題は解決されえないため、この問題は重要な根本的課題である.多々納らは、信頼性の概念で重要な、業者の"意図"及び"能力"に対する信頼性を確保するための制度として、検査結果に基づく報酬スキームを提案し、不備の発見とそれに伴う追加的な報酬を与えることで、これらの信頼性が確保されうることを示した.また、藤見は住宅が被災した場合に住民が被る負の便益について定量的評価した.本来、家計の耐震改修に関わる意思決定は、耐震改修費用の負担に伴う負の便益と耐震改修を実施せずに住宅が被災した場合に発生する負の便益の相対評価に依拠するため、被災時の住民の負の便益を定量評価することは耐震改修促進政策を考える上で非常に重要である.避難時、応急時、復興時における住居選択行動を表明選択法に基づき分析し、その結果、長岡市の平均的な世帯にとって、自宅ではなく避難所、仮設住宅、公営住宅、賃貸住宅に住むことによって生ずる被害額は、それぞれ20.6万円/月、16.0万円/月、13.4万円/月、9.6万円/月であることが明らかになった。
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水工学論文集 52
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土木計画学論文集 24
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Proceedings of the 2997 IEEE Systems, Man, and Cybernetics conference
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土木計画学研究・講演集 35(CD-ROM)
土木計画学研究・講演集 36(CD-ROM)
土木計画学研究・論文集 24
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