当初平成18年度は、以下に示す4つの研究課題の実施を計画したが、その一部については個人情報保護や国家安全の観点から実施が困難なものもあった.(1)米国におけるNFIPの実施状況の調査、(2)米国ルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州、およびフロリダ州における2005年度被災状況調査、(3)我が国における都市型洪水および高潮被害実態調査、(4)項目(3)の調査対象地域の不動産価格および土地利用実態調査.まず、(1)の米国におけるNFIPの実施状況の調査であるが、FEMAの協力もあり統計資料や映像が入手できたため順調に行うことができた.その結果得られた概略は、ルイジアナ州における被災地では多くの地域が洪水保険(NFIP)の対象地域でなかったため洪水保険がかけられていなかった.そのため、洪水保険が適用されず被災地の復興の遅れが生じ住民が帰還せず治安上の問題が深刻化している.地球温暖化も関わると考えられるハリケーンや台風の大型化と広域化は公的洪水保険を地域限定とすることを困難にしている.保険対象地域を拡大することや保険金額の適正化が必要とされる.次に、(2)の被災調査については、ルイジアナ州では報道等では観光に向けて治安の回復維持が喧伝されていたが、立ち入りが躊躇されるまたは禁止される地域が多く、実際に調査を行うことが困難であった.ミシシッピ州沿岸の被災地域の調査は、研究代表者が同州沿岸に土地感があったことから順調に被災調査を行うことが可能であった.沿岸にかけられた橋の多くが落橋しており、調査に際して迂回しながら沿岸域を巡るため時間を要した.このミシシッピ沿岸域は古くからの道路が海岸線に沿って走っているので被災前の映像もありハリケーンカトリーナの被災前後の比較が容易にできる.研究代表者も被災前の構造物・施設の写真を有していることから調査は効果的であった.フロリダ州は東海岸沿岸の三分の一程度を踏査することができた.東海岸沿岸の多くに砂嘴が発達しておりそれらの地域へ渡るための橋が被災しており、橋の掛け直し工事が進められていた.これらの地域はリゾート地域であるため復旧活動は活発であった.被災程度はミシシッピ程甚大でないこともその理由と考えられる.現地警察に声をかけられることが多かった.調査に際して現地警察への対応に留意する必要があると考えられる.さらに、(3)と(4)の我が国における調査であるが、調査対象とした自治体の対応であるが個人情報の観点から自治体が所有する被災地域の住民データが活用できなかったため調査を一次的に断念した.急遽、カリフォルニア州のRussian River流域の被災調査に振り替えた.同州では比較的基礎データの入手が用意であり、NFIPとの対応も容易と考えられたためである.サンフランシスコが近く不動産価格も決して低くなく、以前より頻繁に洪水に被災しているので適地と考えた.調査を継続中である.
|