これまで、日本では飲料水の微生物的安全性を確保するため、病原性に対する卓越した殺菌効果、効果の持続性の長さ、安価で取り扱いも比較的容易である塩素殺菌が行われてきたが、発癌性を有するトリハロメタンの生成や塩素特有の臭気、残留塩素による生態系への悪影響などが問題となってきている。そのため、代替塩素殺菌技術として膜分離や凝集剤、オゾンを用いた技術開発等が行われている。しかしながら、装置の維持管理の困難さ・導入によるコストの上昇など課題の多さ等から未だ実用化には至っていない。そこで、本研究ではこれらの問題を解決するために高濃度気体溶存水を用いた病原菌等の制御・殺菌法を開発することが目的とした。殺菌に高濃度気体溶存水を用いることで従来の手法とは異なり、薬品を用いず低コストでの殺菌が可能となり、塩素殺菌による効果が乏しかった原虫類(クリプトスポリディウム原虫等)等にも効果を発揮できると期待される。ラボスケールの実験装置を製作し、高濃度酸素溶存水を用いることで期待される2つの効果(水への殺菌機能付与、菌体の膨化による殺菌効果)について実験的検討を行った。さらに殺菌効果に影響を与える因子について検討を行った。 今年度の研究結果をまとめると以下の通りである。 (1)高濃度気体溶存水を用いることで、殺菌を行うことができ、水への殺菌機能付与、菌体の膨化による殺菌効果に関して確認できた。 (2)高濃度気体溶存装置の内圧と外圧の圧力勾配を高くすることで微生物の膨化効果を促進させることができ、殺菌技術として非常に有効であることが確認できた。
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