研究概要 |
本研究はわが国の今後の都市空間整備において重要である都市空間密度に関して,人々の景観認知というアプローチから適正な空間密度を導くことのできる評価手法を開発することを目的としている。従来空間密度は建物の高さ,容積率,建蔽率,隣接道路幅員等の指標によって評価されその生活環境としての質を指し示してきた。本研究ではそれらの指標と人々が直接体験する空間密度やそれに由来する快適性の間にあるギャップを心理学的観点から検証し,人間の視点にたった適正な空間制御のあり方を検討する。 2年目の研究としては,初年度の研究成果である街路樹の構成による空間密度感の評価について,道路横断構成と沿道建物の関係性を踏まえた再整理を行った。評価基準としても,単なる3次元物理指標および透視形態指標のみならず,人間の行動心理の特性を踏まえ,仮想的テリトリーという新たな概念を提案し,こうした属性が,空間密度に及ぼす影響について検討を行った。その成果は19年度景観デザイン研究発表会において公表した。加えて今年度の当初の計画通り,CGによる空間評価を拡張し,4面スクリーンを用いた没入型映像体験装置CAVEの活用について検討した。具体的には地表面と建物,植栽からなる3次元モデルを種々作成し,CAVE装置に投影する実験を行った。モデルの投影ではデータのサイズがボトルネックとなるが,街路のモデルの再現性を高めるため写真のテクスチャー,樹木の詳細な3次元モデルの利用など諸条件を変えつつ変換と投影を繰り返し,最終的に投影可能なモデルの条件を概ね見いだすことができた。今後,CAVEシステムを用いて仮想現実の空間内でのリアルな空間密度評価を行う予定である。
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