大都市圏の住宅市場に関して、公的統計、民間機関の統計、住宅情報誌から収集したデータなどを加工・分析し、都心とベイエリアにおけるホット・スポット、縁辺部におけるコールド・スポットの形成実態を明らかにし、住宅市場の差異化が進んでいる状況とそのメカニズムを解析した。ホット/コールド・スポットという概念を提出し、住宅市場分析の新たな視点を示したことが、本研究の主な成果である。具体的には以下の点を示した。 (1)都心とベイエリアではマンション供給の増大によってホット・スポットが出現した。これは住宅の需給関係に関わる要因だけではなく、都市計画の規制緩和などを進める都市再生政策の影響を要因としている。 (2)ホット・スポットでは新型の住居形式であるタワーマンションが目立って増加した.その販売用パンフレットを収集し、分析したところ、タワーマンションは、セキュリティの重視、サービス・施設の充実という特徴をもち、近隣の文脈から分離した「飛び地」を形成するという空間特性をもつことが明らかになった。 (3)都市縁辺部ではバブル期に立地したマンションの価格が半分以下にまで低下し、コールド・スポットが生成した。そこではキャピタルロスが増大し、マンション所有者はネガティブ・エクイティを抱え込む状況にある。 (4)大都市圏の住宅市場はバブル期に過熱し、ポストバブル期に停滞した。住宅市場全体の過熱・停滞が経験された。しかし、21世紀の住宅市場については、人口・経済・政策要因を踏まえ、全体動向を分析するだけではなく、ホット/コールド・スポットの差異化という新たな傾向を注視して分析を進める必要がある。
|