研究概要 |
本研究は、現代の日本の都市でみられる様々な歴史的居住環境には、Aいかなる種類の積層パターンが存在するか,B個々のパターンの経路依存的特質は何か,の二つについて明らかにすることを研究全体の長期的目的として設定している。そして、科学研究費の期間内には、当該課題の輪郭を明確にし、より具体的な仮説を再提案すること、すなわち今後の研究の具体的な見通しを得ることを目的とする. 本年度は、2006年8月に行った東北地方の歴史的都市調査、12月に京都で開催された国際学会での研究報告が研究の中心となった。これらを含め研究期間全体を通じて歴史的都市に関する資料収集とデータベース化を推進した。 8月に行った調査は、青森県弘前市仲町・黒石市中町、岩手県金ケ崎町諏訪小路の重要伝統的建造物群保存地区を対象としたもので、景観調査と資料収集を重点的に行った。弘前・黒石では町人地の配置形式が日本海側に広く共通する特徴的なものであり、大規模な町家では庭園を通りに接する位置に塀で囲って設けていることが確認された。町人地の積層パターンの把握には地域性の考慮も必要であることが判明した。 12月に行った研究発表では、これまでの茨城県桜川市真壁町における都市保存研究を上述の観点からまとめなおした。特にここでは、積層パターンの都市保存における評価について論じた。 以上から、西欧や中国の都市と異なり、日本の都市ではその都市領域が中心を変化させながら重畳的に形成され、一つの都市の中に複数の積層パターンが生成される可能性が高いことなどが明らかになった。
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