研究概要 |
本研究は,現代の日本の都市でみられる様々な歴史的居住環境には,Aいかなる種類の積層パターンが存在するか,B個々のパターンの経路依存的特質は何か,の二つについて解明することを研究全体の長期的目的として設定する.そして,科学研究費の期間内には,当該課題の輪郭を明確にし,より具体的な仮説を再提案すること,すなわち今後の研究の具体的な見通しを得ることを目的とする. 本年度は,2007年6月及び2008年3月に行った京都府の古代都市遺構=平安京・恭仁京の遺跡外観調査,近世都市江戸・京都の藩邸関係史料の調査・読解・分析が研究の中心となった.これらを含め研究期間全体を通じて歴史的都市に関する資料収集とデータ・ベース化を継続した. 古代都市遺構の外観調査のうち平安京遺構は,発掘調査中の旧土井利勝邸(旧左京三条二坊十町)遺構,旧二条家屋敷遺構の発掘調査を対象とした.いずれにおいても大規模な敷地が古代から現代まで継承され,近世段階の絵図も残されていて今後の精査が可能な事例であることが判明した. 一方,藩政関係資料の調査のため,7月に山口県文書館を訪れ,萩藩の江戸・京都藩邸についての土地関係史料・指図史料等の近世史料を閲覧・撮影した.これらの調査成果を読解・分析し,同様に大規模な敷地が継承される場合でも,内部空間の分節・独立化が17世紀を通じて進行する状況を確認した.以上の研究成果を2008年12月の国立歴史民俗博物館主催シンポジウムで発表した.
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