研究概要 |
本研究は,現代の日本の都市でみられる様々な歴史的居住環境には,Aいかなる種類の積層パターンが存在するか,B個々のパターンの経路依存的特質は何か,の二つについて解明することを研究全体の長期的目的として設定する.そして,科学研究費の期間内には,当該課題の輪郭を明確にし,より具体的な仮説を再提案すること,すなわち今後の研究の具体的な見通しを得ることを目的としている. 本年度は,昨年度に遺跡外観調査の対象とした旧土井利勝邸(旧左京三条二坊十町)遺構に関する詳細調査・分析・執筆,京都府の古代都市遺構=鳥羽離宮跡の遺跡外観調査を行うとともに,研究期間全体を通じて歴史的都市に関する資料収集と都市史料に関するデータ・ベース化を継続した.また3年度の成果をまとめることに注力した. このうち旧土井利勝邸遺構の研究については,2008年5月及び10月に古河歴史博物館にて藩政史料調査を実施するとともに,同年10月に京都市教育委員会において調査知見についての討議を行った.新たに3枚の藩邸絵図を見出し,それぞれの絵図の年代を考証して確定した.この結果,同遺構における街区内利用の近世から近代にかけての変遷が判明したので,古代都市の街区をベースにしながら各時代の開発の積み重ねがどの程度径路依存的な性格を持つかについて考察した.以上の研究成果については,2009年3月に立左大学で開催された研究会(黒田日出男氏主催)で発表した.また,一昨年度来の研究のうち,真壁に関する成果を中国語学術雑誌に発表する一方,都市保存に関する知見については,2008年12月に開催された群馬県桐生市主催のシンポジウムにおいて口頭発表した.
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