本研究は、1922年に刊行された今和次郎著『日本の民家』に収録された民家を再訪することによって、その後のおよそ90年にわたる、日本の居住空間・景観の変容を調査分析することを目的としている。そして初年である平成18年度は、今和次郎の行った民家調査の順番、順路、系列を分析し、大きく二つの実地調査を行った。 まず工学院大学図書館蔵の今和次郎文庫にて、今の残した当時の記録を確認した(以降野帖とする)。そこで、これまで明確にされていなかった今和次郎の足跡を復元することができた。また、書籍『日本の民家』未収録の調査物件も多く含まれていたことが判明した。 2006年8月27目から9月1日にかけて関東地方の大間木(埼玉県さいたま市緑区)、甲州街道、内郷村(神奈川県相模原市相模湖町寸沢嵐、現相模湖付近)を調査した。2007年1月9日から18日にかけて四国(徳島、愛媛、高知)を実地調査した。調査準備として、野帖の読み取り、当時から現在までの地図、航空写真などをまとめ、今和次郎の訪れた民家に対して基礎資料を作成しデータベース化を行った。 実地調査に当たっては、各地の教育委員会の協力を得て、基礎資料を参考に、実測調査、定点観測、周辺調査、古老への聞き取りを行なった。今が対象家屋の番地を記録として残していなかった家屋もおおむね判明し、可能な場合は、実測を行なった。また実地調査終了後それらを図面化し、旅ごと、民家ごとに分析・考察を行ってきた。本年度も順次訪問し、来年度までにそのおおよそを踏破する予定である。
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