研究概要 |
研究2カ年目にあたるH19年度は、「ポスト・オスマン」期における、パリ市による誘導的都市景観創出の諸実態を明らかにすべく、パリ市第II区、ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区をフィールドとし、次の作業を実施した: (1)道路開設事業の意義や優先順位を決定する際のパリ市議会の政策決定過程に関して、パリ市議会の審議、討論、レポート、議事録「パリ市議会録、官報:Conseil municipal officiel de Paris-deliberation, rapport, debat, proces-verbal, Bulletin municipal officiel de Paris」の分析を行った。また、それらとパリ都市大改造に関する具体的な記録があるオスマン自身が記した『回顧録』(Memoire)の関連事項との照合を行った。 (2)パリ市による景観誘導に関して次の資料を分析した。建築物の高さや道路側への張り出しに関する規制緩和(1882、1884、1902年)に関するデクレ、加えて「ファサード・コンクール」(1898-1912年)の理念やその実施、受賞作品に関する報告書・雑誌として、定期刊行物La Revue generale de l'architeetureならびにLa Construetion Moderne。 (3)こうした規制緩和や「ファサード・コンクール」を通じて、新しい都市景観を模索する上で、パリ市はそれに相応しいと判断する建築には、規制を超えて特別な建築許可を与えていることがわかった。その資料は、「道路開設許可申請書類一式:Vo-11(パリ古文書館Archive de Paris)」に収められている土地所有者・建築家とパリ市との間で請願書や許諾書等の書簡、また、それにあわせて建築許可申請を得るための図面である。
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