都市組織の変遷とパリ市による誘導的都市景観創出の試みがパリ市の近代建築の萌芽に及ぼした影響を解明することが最終年度の目的であり、主として次の2つの取り組みを行った: (1)先の2年間(H18-19年度)の継続研究と整理 本研究の主フィールドである、パリ市第II区、ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区において、「ポスト・オスマン」期に実現されたオスマン型開設道路計画の詳細を明らかにした。また、その際に試みられたパリ市による誘導的都市景観創出の施策である「ファサード・コンクール」と「規制緩和」が、「工業建築・商業建築」の形成にどのように反映されたかを解明すべく、関連する空間情報(ex.立地、平面・断面形態、ファサードの特徴、建築許可申請時の建築家の意図やパリ市の見解、etc.)を読み取り、GISを用いてデータ化した。一連の作業では、「道路開設許可申請書類一式:Vo-11(パリ古文書館)」と「古きパリ委員会議事録」を主な一次資料とした。 (2)新たに見出された研究課題に向けた予備調査 本研究を通じて、「ポスト・オスマン」期におけるパリ市による新しい景観形成の取り組みが、パリ市全体へと展開されていった事実が判明した。この動きは、19世紀末のベル・エポックを中心とする華やかな時代を経て20世紀に入ると、「世界大戦」期にかけてその様相を一転させ、国威発揚的なモニュメンタルな政策へと方向転換されていることが分かった。そうしたオスマン失脚以降の都市計画のドラスティックな展開が、ル・コルビュジエやオーギュスト・ペレといった近代建築家達による近代建築・都市計画に重要な影響を及ぼしたことが予見され、その詳細を次期科学研究費申請研究(新規)として詳細に展開すべく、予備調査をIFA(1'Institut francais d' architecture)やパリ市歴史図書館を中心に実施した。
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