平成19年度は前年度に立ち上げた水熱反応装置に高圧ポンプを付加し循環系システムとし水熱反応を実施した。コーニング#7059ガラス基板上に高周波スパッタ法により成膜したアルミニュウム膜(200nm)を370Kで0.1MPaと25MPaで反応させたものを比較し、さらに25MPaで370Kから650Kの超臨界状態までの反応を比較した。高圧反応で408Kまでは1気圧の反応に比べ高い光学的透過率を示した。1気圧の反応でも基板自体の透過率を上回っていたが、高圧下の反応はさらに改善できることが明らかとなった。505K以上では膜が消失し超臨界状態ではガラス基板自体が犯されるほど活性であることがわかった。 熱処理過程を調査するために本研究費により質量分析器を購入し、加熱炉を新たに作製し、これらを既存の真空排気装置に装着し、ガス分析装置を作製した。そして773Kまでの昇温実験を行い脱ガス過程を調査した。異なる温度で二段階で脱水反応が起こることが明らかとなった。 水熱反応により生成された膜は多孔質のベーマイト(水酸化アルミニュウム)であることを確認した。真空中及び大気中にて773Kで熱処理を行った結果、真空中熱処理ではベーマイトが微細粒化もしくは非晶質化する傾向が見られたが、大気中熱処理では、δアルミナ、γアルミナ、不完全なγアルミナへ改質されることがはじめて明らかとなった。 本研究により高温・高圧の水がアルミニュウムの水熱反応促進にとって有効な条件範囲が明らかとなった。また水酸化物の熱処理はその雰囲気に依存した反応が生ずることが明らかとなった。
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